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宮坂 宥洪( みやさか ゆうこう)
照光寺住職
成田山蓮華不動院住職
智山伝法院院長

月々の言葉と連載法話
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これまでの法話を毎月一話ずつ紹介していきます。また、毎月境内に貼られる月々の言葉を掲載 していきます。

お寺を訪れる人は、住職の「月々の言葉」に励まされています。ご覧になった方の、心の支えになれば幸いです。

今月の言葉

【日本製の漢語】vol.41

明治時代に生まれた翻訳語は夥しい数にのぼります。思いつくままに挙げてみますと、「文化」「文明」「社会」「思想」「宗教」「文学」「哲学」「学術」「技術」「芸術」「歴史」「美術」「教育」「自由」「進歩」「流行」「構造」「規則」「観察」「試験」「実験」「演繹」「帰納」「口碑」「散文」「政府」「立法」「行政」「大統領」「経済」「鉄道」「電信」「電話」「電報」「郵便」「心理学」「生理学」「地理学」「物理学」「化学」「天文学」「地質学」「鉱物学」「植物学」「動物学」等々。

今では日常語としても専門用語としても普通に使われているこれらの言葉は、明治の人々が苦心の末に編み出し、あるいは仏典や漢籍から援用したものでした。
例えば、「宗教」という言葉は古くからあり、かつてそれは仏教と同義だったのすが、キリスト教等も含む(というよりキリスト教を筆頭とする)英語のreligion の訳語として用いることにしました。
そうすると、神道は仏教ではなく、むろんキリスト教とも違うので、「神道は宗教に非ず」という、いわゆる神道非宗教論が明治時代の初期より起こり、この問題を巡る論争は戦前まで続きました。

これらの漢字はその後、中国や韓国に逆輸入され、今ではあたかも昔からあった漢語のように用いられていますが、近代の西洋翻訳語としての漢語のほとんどすべては明治時代の日本人の発明です。
言い換えれば、漢語のすべてが中国の発祥というわけではなく、むしろ近代用語に関しては、日本の独壇場といって差し支えありません。

明治時代の日本人が西洋の言葉を何とかして日本語に移し替えようとして苦心したのに比べて、現代の日本人はそのような努力をほとんどしていないように思われます。今ではコンピュータを電子計算機と呼ぶ人はいませんし、そのコンピュータ関係の説明書や用語集は、外来の片仮名言葉で溢れています。それらの新語に相当する言葉は仏典や漢籍に求めることは不可能ですし、下手に漢字を組み合わせて造語をすれば、かえって分かりにくくなるという面もあるのでしょう。

新しい用語は英語そのものにおいても新造語である場合があり、例えばコンピュータが発明される前は、当然のことながらコンピュータという言葉は英語にもなかったわけです。それと同様に、片仮名言葉それ自体が、新しい日本語として定着していくのかもしれません。

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