照光寺タイトル画像
住職写真

宮坂 宥洪( みやさか ゆうこう)
照光寺住職
成田山蓮華不動院住職
智山伝法院院長

月々の言葉と連載法話
バックナンバー

これまでの法話を毎月一話ずつ紹介していきます。また、毎月境内に貼られる月々の言葉を掲載 していきます。

お寺を訪れる人は、住職の「月々の言葉」に励まされています。ご覧になった方の、心の支えになれば幸いです。

今月の言葉

【クローン人間の悪夢】vol.39

 

今から十数年前の1996 年(平成8 年)7 月5 日、イギリスで「ドリー」と呼ばれるクローン羊が誕生しました。雌雄の成体の体細胞を用いた哺乳類初のクローン生物誕生の報道は全世界に衝撃を与えました。この実験の成功は直ちにクローン人間の誕生を予想させたものでした。

その5 年後、「米ケンタッキー大のバノス・ザボス教授(生殖生理学)は、不妊治療を目的に、1、2 年のうちにクローン人間を誕生させる計画を発表した。(中略)日本では6 月から施行される法律で禁じられるクローン人間づくりが現実味を帯びてきた」と報じられました(平成13 年1 月29 日『朝日新聞』)。
しかし今現在、クローン人間の誕生はおろか、クローン技術のことは、ほとんど話題にもなりません。なぜでしょうか。

2003 年(平成15 年)2 月14 日、6 歳になっていたクローン羊のドリーを、安楽死させたと、その生みの場所であるスコットランドのロスリン研究所は発表しました。これが原因でした。
ドリーは老化が早く、肺の疾患を患っていました。6 歳というと、羊の一般的な寿命の約半分です。ドリーは、6 歳の雌羊の乳腺細胞からのクローニングによって誕生していました。
これは何を意味しているいるかというと、クローン羊のドリーは、誕生した時点で既に6歳の羊だったということです。

もし80 歳の人間のクローンが作られたとしても、その赤ん坊はゼロ歳ではなく80 歳の人間として生まれてくるということなのです。むろん成人として生まれてくるのではなく、赤子から幼少年期・青年期を過ごすのですが、その間に急速度で老化していくことになるわけです。
つまり、どうやらクローン生物は、本体の寿命を超えることはないのです。このことが分かって、クローン技術によって人が永遠の生命を得られるかのような夢は消え失せたのでした。
クローン人間は、法律で禁止するまでもありません。生まれながらにして老いた羊のドリーのような、おぞましく無意味な悲劇は、人為で作りだしてはいけないということに、科学者も気づいたのでした。
人知をはるかに超えた生命の神秘は、科学の進展によってむしろ一層深まったと言えるでしょう。

照光寺について

住職より