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宮坂 宥洪( みやさか ゆうこう)
照光寺住職
成田山蓮華不動院住職
智山伝法院院長

月々の言葉と連載法話
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これまでの法話を毎月一話ずつ紹介していきます。また、毎月境内に貼られる月々の言葉を掲載 していきます。

お寺を訪れる人は、住職の「月々の言葉」に励まされています。ご覧になった方の、心の支えになれば幸いです。

今月の言葉

【日本語の仏教⑥】vol.90

日本語の山について

日本仏教の寺は「山」と呼ばれている。

寺の住職を「山主」というし、寺の門を「山門」という。(三門ともいう。)

また寺の開基を「開山」といい、末寺を擁する大寺を「本山」という。

実際に、日本中のほとんどすべての寺には「山号」がついている。

山号とは何か。

さんごう【山号】

寺院の名に冠する称号。もと寺院は多く山にあり、その名をもって呼ばれた。日本には禅宗と共に山号の制が伝えられ、のち平地の寺院にも波及した。(『広辞苑』第7版)

日本には禅宗と共に山号の制が伝えられ……と説明されているが、果たしてそうだろうか。

禅宗寺院の一部で中国の山号の制を取り入れたということもあったかもしれないが、日本中の寺院に山号がついている理由は、そんな皮相的なものではないと思う。

比叡山延暦寺や高野山金剛峯寺など、平安時代の初期から山号は付けられていた。

山岳地帯であろうと、平地であろうと、都会地であろうと、どんな僻地であろうと、どんな大寺であろうと、どんな小さな寺であろうと、また禅宗寺院であろうとなかろうと、日本中の寺院には、ほぼ例外なく「山号」がついているのである。

唯一の例外が、南都七大寺である。

飛鳥・奈良時代に創建された南都七大寺、すなわち興福寺・東大寺・西大寺・薬師寺・元興寺・大安寺・法隆寺には山号がない。(西大寺だけ後世に山号がつく。)

これを言い換えれば、南都七大寺だけは「山」とは見做されていなかったということである。が、今では例えば興福寺や薬師寺は法相宗大本山、東大寺は華厳宗大本山、法隆寺は聖徳宗総本山などと、本山という名の「山」を名乗っている。

そもそも山とは何か。

『広辞苑』は「やま【山】」について、「平地より高く隆起した地塊。谷と谷との間に挟まれた凸起部」とごく普通の説明をしたのち、「古く、神が降下し領する所としての信仰の対象とされた」と説明している。『沖縄古語大辞典』に、「やま」は「神のまします御嶽」とあるのと共通している。

日本語の「てら」には、「霊場」という意味があることをみてきた。そこが神聖な場所であることを示すために、山号がついていると考えられるのである。

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