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宮坂 宥洪( みやさか ゆうこう)
照光寺住職
成田山蓮華不動院住職
智山伝法院院長

月々の言葉と連載法話
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これまでの法話を毎月一話ずつ紹介していきます。また、毎月境内に貼られる月々の言葉を掲載 していきます。

お寺を訪れる人は、住職の「月々の言葉」に励まされています。ご覧になった方の、心の支えになれば幸いです。

今月の言葉

【世界の言語】vol.40

現在、世界にはおよそ八千以上の言語があるといわれています。(『三省堂言語学大事典』(世界言語編)[1988~93 年]は、実際に八千の言語名を挙げていますが、完全に網羅しているわけではありません。)
世界の国の数は192(2006 年7 月現在)ですから、単純計算すると、一国の中に40 以上の言語が混在している勘定になります。
日本のように日本列島のどこへ行っても日本語という一つの言語で通用するという国はきわめて少数で、むしろ一国の中に複数の、数十のみならず数百に及ぶ異言語が混在している国のほうが多いのです。

インドを例にとると、1949 年の独立後に制定された憲法では、「連邦の公用語は、デーヴァナガリー字によるヒンディー語とする」と定めています。公用語を憲法で定めるなど日本では考えられないことです。
それにもかかわらず、連邦議会や最高裁などの正文はいまだに英語とされていますし、ヒンディー語を公用語とすることに各地で反撥があり、1992 年の第七二次憲法改正時には、18 の言語を公用語として認めるに至りました。インドの紙幣には15 の言語で通貨の「ルピー」がそれぞれ異なった文字で記されています。インドには一体どれほどの言語があるかというと、なんとおよそ1600 以上もあるといわれています。

このような国々の人は日常生活や仕事の必要上、数種類の言語を必然的に習得することになります。でも、一人の人間が習得できる言語の数は限られますから、意思疎通のために飜訳(通訳)が不可欠になります。
日本は飜訳大国であるといわれます。というのも、世界中のあらゆる言語の主要な古典作品をはじめとして、無数の学術書や思想書や文芸書が網羅的に和訳されて出版されているからです。世界の古典の宝庫は、日本語の翻訳の中にあるといって過言ではありません。

世界の大多数の国々の人々にとって、シェイクスピアを読もうとすれば英語を学ばなければなりませんし、カントを学ぼうとすればドイツ語を学ばなければなりません。最新科学を専門に学ぼうとすれば、やはり主要先進国の言語に習熟する必要があります。まずこれは断言してもよいと思いますが、その必要がないのは日本人だけでしょう。
言語こそ文化です。私たちにとってかけがえのない言語である日本語をこれからも大切に守っていかなければなりません。

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