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宮坂 宥洪( みやさか ゆうこう)
照光寺住職
成田山蓮華不動院住職
智山伝法院院長

月々の言葉と連載法話
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これまでの法話を毎月一話ずつ紹介していきます。また、毎月境内に貼られる月々の言葉を掲載 していきます。

お寺を訪れる人は、住職の「月々の言葉」に励まされています。ご覧になった方の、心の支えになれば幸いです。

今月の言葉

【宗教教育について】vol.13

日本国憲法の第20条第3項「国及びその機関は、宗教教育その他いかなる宗教活動もしてはならない」という規定により、わが国では公教育における宗教教育が禁止されています。
モラルの低下に歯止めがかからない昨今の世相を憂いて、宗教教育が必要ではないかという人は結構いますが、憲法上それは不可能なのです。
教育の範囲は多岐にわたりますが、あえて憲法で唯一言及して、禁止しなければならないほど、宗教教育はいけないことなのでしょうか。

諸外国の例は、実はその逆で、最も対照的なのがドイツです。日本と同じく第二次大戦の敗戦国ですが、日本と違ってドイツでは独力で自前の憲法をつくりました。そして学校制度に関する条文の中で、宗教教育に言及して、これだけは「正規の教科目にする」と定めたのです。宗教教育だけはしてはならないと定めた日本と正反対ではありませんか。

ほとんどの西洋諸国では、公認宗教の教育もしくは道徳教育を義務づけています、具体的には、児童の親の宗教別にクラス分けをして、それぞれの伝統宗教について教えるという方式がとられています。それに無宗教の親もいて、宗教教育を受けさせたくないという場合は、その児童には道徳教育が義務づけられています。
イスラム教諸国は政教一致ですから、むろん宗教教育は必須です。

アジアでは、例えば仏教国のタイでは学校に仏像が安置されていて、児童は登校時に必ず仏像に礼拝します。学年ごとに仏教の教えに関するカリキュラムをくみ、僧侶を招いて次第に高度な内容を教えるようにしていますので、国民のほとんどが仏教について相当の知識を持っています。
かつてイギリスを衰退の危機から救った鉄の宰相マーガレット・サッチャーは、なによりも宗教教育を重視し、こう述べました。イギリスに住むイギリス人ならば、イギリスの伝統的宗教であるキリスト教を身につけてほしいと。そして、なんとそれを法制化したのです。

宗教のない民族はありません。世界各地の伝統的な宗教は、無数の先人の知恵の結晶です。それなくしては犬畜生にも等しく、現世代で絶やしてはならないと思うのは世界の常識です。わが国に限って、それを教えてはならないと憲法で定め、つまりは祖先の知恵と営みから寸断された教育をして、さて子供たちを一体どこへ導こうとしているのでしょうか。

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