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宮坂 宥洪( みやさか ゆうこう)
照光寺住職
成田山蓮華不動院住職
智山伝法院院長

月々の言葉と連載法話
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これまでの法話を毎月一話ずつ紹介していきます。また、毎月境内に貼られる月々の言葉を掲載 していきます。

お寺を訪れる人は、住職の「月々の言葉」に励まされています。ご覧になった方の、心の支えになれば幸いです。

今月の言葉

【世界宗教の分布】vol.38

世界宗教分布図というのを御覧になったことがあるでしょうか。
世界地図上にキリスト教、イスラム教、仏教などの各種の宗教の勢力圏を色分けして表したものです。
これを見ると世界には宗教の空白地帯はないことがわかります。
また、宗教の分布状況は必ずしも国境線とは一致しません。宗教分布のほうがはるかに広域にまたがっています。また一つの国の中でも、いくつかの宗教が混在している場合があります。

そこで、いっそのこと、もし全世界が一つの宗教で一色になれば、さぞすっきりするだろ うと思いますか。それはとんでもない話です。
たとえば中南米のほとんどはカソリックの国です。ペルーやブラジルの公用語がポルトガル語であるのは大航海時代の産物ですが、それは昔から現地に住む人々にとって途方もない悲劇の結末にほかなりません。
キリスト教は世界各地に近代文明をもたらしましたが、それぞれの土地に太古の昔から連綿と続いていた宗教的伝統や言語や民族遺産や、ときには民族そのものを滅ぼしたというのも厳然たる事実です。

第二次大戦後に、インドがパキスタンとの分離を代償に独立せざるをえなかったのも、イスラム教とヒンドゥ教の対立が原因でした。それも元をただせば、8 世紀頃からイスラム教徒がインドに侵入し、イスラム教の王朝まで築かれた歴史に起因することです。イスラム教徒によってインド仏教は想像を絶する惨劇をともなって壊滅したのでした。
これらの宗教は国境を越えて広がり、今や「世界宗教」と呼ばれていますが、その蔭で、これまでどれほど弱小の民族宗教が犠牲になってきたことでしょう。かつてキリスト教は、まず宣教師を送り、人心を掌握した後に武器を持って乗り込み、世界各地を制圧したのです。イスラム教の場合は、剣とコーランの侵入が同時でした。

これに比して、仏教の場合、武力はゼロです。そもそもインド人が中国や日本に乗り込んできて仏教を広めたわけではありません。仏教は誰かが宣布して広まったのではなく、求める人がいて広まったのです。経典を求めてインドに赴いた唐の三蔵法師玄奘の例が最も有名ですね。
日本でも、最澄や空海、道元や栄西も、大陸への苦難の渡航を経て、それぞれの宗派の礎を築いたのでした。

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