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宮坂 宥洪( みやさか ゆうこう)
照光寺住職
成田山蓮華不動院住職
智山伝法院院長

月々の言葉と連載法話
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これまでの法話を毎月一話ずつ紹介していきます。また、毎月境内に貼られる月々の言葉を掲載 していきます。

お寺を訪れる人は、住職の「月々の言葉」に励まされています。ご覧になった方の、心の支えになれば幸いです。

今月の言葉

【日本人の美徳】vol.01

作家の曽根綾子さんが、かつてある新聞のコラムでこんなことを書いていました。クリーニングに出した衣類の中のお金が戻ってきた。「どこにこんな正直な国があるだろう」と。
「ホテルに間違いなく置き忘れた時計を一時間後に空港で思い出して、何号室に時計がないか見てくれと言っても、まずありましたというケースがないのが外国では普通なのである。
…この正直さは、日本の大きな資産である。途上国はもちろん、アメリカもフランスも真似のできない偉大な資産である。
それなのに、こういう日本人の徳性に関する評価が今では看過されすぎている─。ホント、そうです。
外国旅行をしたことのある方は経験があると思いますが、タクシーに乗って一番心配なのは、どれほどチップを払わなければならないかということです。どんな近距離でもメーター通りの金額で済み、おつりをきちんともらえる国というのは、きわめて希です。私は日本のタクシーの運転手は世界一番正直で、まじめだと思っています。

都内の駅の売店で、こんな光景がありました。「さっき、ここに財布を置き忘れてしまったのですが」という男がきたのです。店員は、こともなげに、「ああ、これですね」といって差し出すと、男はなんのためらいもなく、「それそれ」と言って受け取り、去っていきました。
この話を外国の人に話すと、目を丸くしてびっくりします。そもそも落とした財布が戻ってくるなどということは考えられないと口をそろえて言います。置き忘れるどころか、置き引きにあっても、油断していた自分が悪かったとあきらめるしかないのが、諸外国では普通なのです。
たとえば小学生が道で何円かのお金を拾った。それを交番に届けた。感心なことですね、と褒められた。よくある話ですが、そんなことも日本以外では滅多にないことです。
与えられざるものを取るべからず─。
これが仏教の「不偸盗」という戒め定義です。日本では、クリーニング屋も、ホテルマンも、タクシーの運転手も、駅の店員も、誰もこの戒めをこともなげに実践しているのです。
すごいことですね。

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