照光寺タイトル画像
住職写真

宮坂 宥洪( みやさか ゆうこう)
照光寺住職
成田山蓮華不動院住職
智山伝法院院長

月々の言葉と連載法話
バックナンバー

これまでの法話を毎月一話ずつ紹介していきます。また、毎月境内に貼られる月々の言葉を掲載 していきます。

お寺を訪れる人は、住職の「月々の言葉」に励まされています。ご覧になった方の、心の支えになれば幸いです。

今月の言葉

【日本語の仏教④】vol.88

 辞典の説明

 

最初に検討しておくべきだったが、語源を説明している辞典もある。最新の『広辞苑』第七版(平成30年刊)によると―。

てら【寺】(パーリ語thera(長老)、または朝鮮語chyöl(礼拝所)からという。中国で「寺」はもと役所の意)①仏像を安置し、僧・尼が居住し、道を修し教法を説く建物。伽藍。蘭若(らんにゃ)。梵刹。②特に、三井寺(園城寺)をいう。延暦寺を「山」というのに対する。③寺銭の略。④寺子屋の略。

パーリ語とは、南方上座部仏教(俗に小乗仏教という)で用いられる、いわば経典語である。日本語の「てら」という言葉は、そのパーリ語で「長老」「上座」を意味する「テーラ」に由来する、という。または、「礼拝所」を意味する朝鮮語の「チョル」に由来する、という。

この語源説明は、他の多くの辞典に踏襲されている。しかし、パーリ語か朝鮮語か、どちらか「という」のでは、まるで分からないと言っているに等しい。両方正しいということはありえないから、どちらかが正しいか、どちらも正しくないかである。

なお、『広辞苑』第一版(昭和30年刊)には、「巴利(パーリ)語thera(長老の意)の転という」とあるのみで、朝鮮語由来説との併記は、第二版(昭和44年刊)以降のことである。

まずパーリ語由来説。これを最初にとなえたのは、明治時代に始まる近代仏教学の草分けである南条文雄である。パーリ語thera(サンスクリット語sthavira長老・上座の意)の音写語が「悉他陛羅(しったへら)」で、それが崩れて国語の「てら」になったという。もとは寺の中に住んでいる人を言ったものが、住む場所に転じたというのだが、これによると、パーリ語の「テーラ」が直接日本語の「てら」になったというわけでもなさそうである。

次に朝鮮語由来説。これは、『日本書紀 下』(日本古典文学大系、岩波書店、昭40年刊)の推古天皇の条における「寺」の注に、「テラは刹の朝鮮古音tioᦱrの日本語化した音であろう」とあるのが初見である。

これは奇妙な推測であると言わざるを得ない。「刹」という漢字は、サンスクリット語のkṣetra(国土、場所の意)の音写である。その訛音としての朝鮮古音なるものが、どうして「寺」という漢字の日本語読み(=訓読み)である「てら」になったというのであろうか。

両説いずれにしても、日本語の「てら」は、結局のところ、パーリ語でも朝鮮語でもなく、サンスクリット語に由来するといっているのである。

照光寺について

住職より