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宮坂 宥洪( みやさか ゆうこう)
照光寺住職
成田山蓮華不動院住職
智山伝法院院長

月々の言葉と連載法話
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これまでの法話を毎月一話ずつ紹介していきます。また、毎月境内に貼られる月々の言葉を掲載 していきます。

お寺を訪れる人は、住職の「月々の言葉」に励まされています。ご覧になった方の、心の支えになれば幸いです。

今月の言葉

【とまらない少子化】vol.11

わが国で第一回国勢調査が行われた大正9年(1920)、日本の総人口は、6千5百万人でした。
暁烏敏が詠んだ有名な歌、「十億の人に 十億の母あらむも 吾が母にまさる母ありなむや」は、大正13年に生母を亡くした時の作だといわれていますが、当時の世界総人口は十億人だったのです。
その頃から約80年を経た現在、日本の人口は約2倍の1億2,700万人に増え、世界の人口は約6倍の63億7,760万人(2004年版「世界人口白書」による同年7月の推計)となりました。

今世紀の半ばに世界の総人口は89億人になると推計されています。
しかし日本の総人口は、低位推計で、すでにピークに達し、これから激減の一途を辿る模様です。出生率は年々低下し、そのつど政府は将来の人口推計を下方修正しています。
現在、日本は世界一の長寿国ですが、すでに世界一の高齢国になっています。この勢いはとどまらず、今世紀の半ばをまたずに、人口の3分の1が65歳以上の高齢者で占められるようになります。

1995年の優生保護統計では、中絶数が34万件にのぼり、未報告も含めると百万件に達するとのことです。これは流産ではなく、人工的に胎児を抹殺した件数です。毎年30万件を越える中絶された胎児が、仮に生まれていれば、人口維 持が可能な出生率が保たれるのです。種の保存という生物本来の最大の目的ないしは使命を現代人は見失っているか、もしくは放棄してしまったかのような恐るべき現象です。

この容易ならざる事態に政府も自治体もどれほど本腰を入れて取り組んでいるか、甚だ疑問です。現在の少子化対策とは、仕事と育児の両立とか、保育所の充実だとか、いかに育児の負担を軽くするかという、要するに女性が社会に出て働くことを前提にしたものばかりです。しかし、そうした福祉がはるかに充実しているヨーロッパの国々も少子化の歯止めがかからず、保育所など一つもない非西洋文明国でのみ人口が増え続けているという事実はどうしたことでしょう。

子を産み、手塩に掛けて育てることにまさる偉大な仕事があるでしょうか。わが子が羽ばたいていくことを喜ばない親がいるでしょうか。それを負担と思わせる少子化対策に効果がないのも当然ではないでしょうか。

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