照光寺タイトル画像
住職写真

宮坂 宥洪( みやさか ゆうこう)
照光寺住職
成田山蓮華不動院住職
智山伝法院院長

月々の言葉と連載法話
バックナンバー

これまでの法話を毎月一話ずつ紹介していきます。また、毎月境内に貼られる月々の言葉を掲載 していきます。

お寺を訪れる人は、住職の「月々の言葉」に励まされています。ご覧になった方の、心の支えになれば幸いです。

今月の言葉

【子どもをテレビから離して!】vol.19

1920年インドの狼の洞穴で発見された「狼に育てられた子」のニュースは、当時全世界に衝撃を与えました。狼少女は2人いて、1歳半の子は1年足らずで死亡してしまいましたが、8歳の子は17歳で死亡するまで孤児院で育てられました。
2人は救い出されてから1年たってもなかなか言葉を覚えられず、喜怒哀楽の人間らしい感情が芽生えることもありませんでした。周囲の人々のあらゆる努力により、年長の少女は17歳でようやく普通の子の3歳程度の精神状態まで回復しましたが、それが限界でした。

この話は、人間は生まれながらにして人間なのではなく、狼に育てられてしまうと人間の子どもでも狼のようになってしまうということを示す、不幸この上ない例として、いまだに語り継がれています。

幼児が言葉を覚える能力は大人の目には驚異としか映りませんが、それはかつて誰もが母の膝の上で発揮してきたことです。幼少時に覚え、生涯を通じて使うことになる言語を「母国語」というのは、文字通りに母親の口を通して直接に教わるものだからです。この思い出すことも出来ない意識の底に刻まれている幼児期の原体験こそ、人間の魂の核となり、その後の生涯を通じてあらゆる言動を生み出す源泉となっているのです。

ところが、その源泉が今やテレビになっているのが実情です。
毎日テレビを長時間視聴させてことが原因で、無表情・無反応になるなどの対人関係の障害を示す幼児が増えていることが分かり、米国小児科学会は先年、「小児科医は、親が2歳以下の子供にテレビを見せないように働きかけるべき」と勧告しました。わが国でも、日本小児科学会が「乳幼児のテレビ・ビデオ長時間視聴は危険」と提言し発表しています。

アニメやドラマの中では暴力や殺人が日常茶飯事ですし、子供向きの番組の主人公が「正しく美しい日本語」を話すことは皆無です。それがひっきりなしに、まだ何の判断力もない無防備の子供の脳に入ってきて、「三つ子の魂」ができあがるのです。そして、生涯の人格の基礎が完成してしまうのです。

わが子を狼に育てさせようと考える親はいないはずです。ならば、子供を狼から引き離すのと同じ気持ちで、せめて3歳までは、子供をテレビから引き離すべきではないでしょうか。

照光寺について

住職連載法話