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宮坂 宥洪( みやさか ゆうこう)
照光寺住職
成田山蓮華不動院住職
智山伝法院院長

月々の言葉と連載法話
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これまでの法話を毎月一話ずつ紹介していきます。また、毎月境内に貼られる月々の言葉を掲載 していきます。

お寺を訪れる人は、住職の「月々の言葉」に励まされています。ご覧になった方の、心の支えになれば幸いです。

今月の言葉

【日本人の死生観①】vol.65

「霊」と「魂」―漢字の成り立ちから―(1)

まず「霊」という漢字は一般的に「れい」と音読みしますが、この訓読みは何か。即答できる人は案外少ないかもしれません。

次に「魂」という漢字は「こん」と音読みしますが、この訓読みは何か。これは分かりますね。「たましい」と読みます。

非常に初歩的な話で恐縮ですが、漢字の読み方のことから始めます。

漢字が移入される以前から、日本には「たましひ」という言葉がありました。それに似た意味を表わす漢字が「魂」だったので、古代の日本人は、この漢字を「たましひ」と読むことにした。これが「訓読み」です。

本来の中国語の読みを「音読み」と言います。それには、日本に伝えられた時代の中国の読み方の違いが反映していて、大きく分けて三つあります。

第一に、漢音。これは今なお最もよく用いられている読み方です。例として「行」という漢字は、漢音で「こう」と読みます。熟語として「行動」「行為」「銀行」「旅行」などたくさんあります。

第二に、呉音。「行」という漢字は、呉音では「ぎょう」です。仏教語として知られる「修行」「苦行」「行事」「諸行無常」といった場合の読み方の音です。

以上は、奈良・平安時代から用いられた読み方です。

第三に、唐音。これは鎌倉時代以降の読み方です。主に禅宗の留学僧によってもたらされた宋代以降の読み方で、「宋音」とも言います。「行」という漢字は、唐音では「あん」です。普段はあまり用いない読み方ですが、熟語として「行脚(あんぎゃ)」「行灯(あんどん)」「行火(あんか)」などがあります。

一般的な日常用語は漢音が多く用いられていて、仏教用語の多くは呉音です。

例えば「精霊」は日常語(つまり漢音)としては「せいれい」ですが、仏教読みでは「しょうりょう」です。

よく仏教の言葉は難しいと言われるのは、このように呉音で読むことが多いからです。

いずれにしても漢字の本場の中国ではとうの昔に失われた読み方(ある意味では漢字本来の音読み)が現代の日本に残っていて、しかもその数種類の読みが使い分けられているのは、すごいことのような気がします。

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