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宮坂 宥洪( みやさか ゆうこう)
照光寺住職
成田山蓮華不動院住職
智山伝法院院長

月々の言葉と連載法話
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これまでの法話を毎月一話ずつ紹介していきます。また、毎月境内に貼られる月々の言葉を掲載 していきます。

お寺を訪れる人は、住職の「月々の言葉」に励まされています。ご覧になった方の、心の支えになれば幸いです。

今月の言葉

【日本語の仏教⑧】vol.92

仏とは?

仏(佛)という漢字は「ホトケ」と訓読みされるが、その理由は不明である。

元来、漢字の「仏」は、「覚者」を意味するサンスクリット語buddhaの音写で、古くは「浮屠」「浮図」などとも音写された。この漢字音写が「フト」と読まれ、やがて「ホトケ」という言い方になったという説があるが、定かではない。

なお、サンスクリット語の俗語であるパーリ語の文化圏(すなわちスリランカやタイやミャンマーなどの南方仏教諸国)において、buddhaは仏教の開祖、釈迦牟尼世尊(すなわち、お釈迦様)をさし、それ以外の何者でもない。

一方、サンスクリット語及びその翻訳言語(漢語やチベット語)で広まった大乗仏教の文化圏において、buddhaは薬師・阿弥陀・阿閦・大日などといった様々な名称を持つ超越的な尊格である。

「仏」と「如来」は同義であるから、たとえば、薬師は薬師仏とも薬師如来とも呼ばれるし、阿弥陀は阿弥陀仏とも阿弥陀如来とも呼ばれる。

さて、日本語で、「ホトケ」という場合(ふつう、「ほとけさま」とか「みほとけ」と尊称する)、それは釈迦牟尼世尊(=お釈迦様)をさすこともあれば、薬師如来や阿弥陀如来をさす場合もある。

だが、日本語の「ホトケ」は、日本語においてのみ特有の別の意味をもつ。それは何かというと、「死者」である。

テレビの刑事物ドラマで「川でホトケが上がった」などという場面があるが、それは水死体が発見されたという意味である。これは一見スラング的用法なのかと思ったりもするのだが、そうではない。ふつうの一般家庭でも亡くなった人をさして「わが家のホトケ様」という。これをスラングと呼んではなるまい。なぜなら、これは死者を最大限に敬った尊称なのだから。

あらためて重要なことを指摘(というより確認)しておこう。日本では、死者は無条件に「ホトケ」と呼ばれる。そして、「ホトケ」とは死者を最大限に敬った尊称である。

死ねばホトケ、というではないですか。

だが、世界の他のいかなる仏教圏だけでなく、いかなる宗教圏においても、つまり日本以外のいかなる国においても、そんなふうに考える人はいない

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